レポゼッション・メン
監督:ミゲル・サポクニック
出演:ジュード・ロウ/フォレスト・ウィッテカー/リーヴ・シュレイバー
2010年/米/111分/岡田壮平/☆☆☆
批評 批判するために、足場を固めないとイカンよ
ローンで人工臓器を購入し、支払いが滞ると臓器回収 = 死亡するという世界。
SF は、メタファーを駆使して現代批判を行うことが出来る。
サブプライムショックでの債権と利上げが問題になっている米国の現状を考えると、この映画がなにを描いているのかよく分かるというものだ。
しかし同時に、この映画の出来は、はっきり言ってよくないと思う。
それは、社会批判を使用とするあまり、足元の設定を蔑ろにしすぎているからだ。
蔑ろにしているわけではなく、そんなことを考えていないだけの可能性はきわめて高いのだが。
しかし、社会批判をする上で重要なのは、その基盤をも正確に作ることだ。
予め、出来うる限り、想像しうる限りの逃げ道をふさいでおくことは重要だ。
きわめて危険性の高い業務につく従業員への保険制度はどうなっている?
相棒の犯罪行為はなぜ暴かれない?
子供に渡す予定の「音楽」はどうなった?
こうした瑣末的な、しかし膨大な量の疑問が、この映画の「現代アメリカ批判」を、なんだかあやふやな物にしてしまっていると思う。