椿三十郎
監督:森田芳光
出演:織田裕二/豊川悦司/松山ケンイチ
2007/日/119分/☆☆
批評 傑作が・・・
黒澤明の傑作「椿三十郎」を再映画化。
汚職まみれの藩上層部に危なっかしく立ち向かおうとする若侍と、それを手伝う豪傑、椿三十郎の物語という大枠はおろか、基本的にオリジナル版の脚本をそのまま流用して作られている。
カメラワーク、編集もいたるところで模倣。
目指すのは、そのまんまのリメイクだったのだろうが、いかんせん、今、そのままやるのは無理があった。
まず、台詞回しが固い。
決起盛んで考えの浅い若者は、いまみると大分しっかりした話し方をしてしまっているし、それに比例して、ちょっと間抜けな悪党三人組が、ただの馬鹿にしか見えない部分が出てきてしまっている。
椿三十郎のべらんめぇ調も、今にしては古い。豪傑の言葉にはとても聞こえない上、やる気がすべてに先行する織田裕二は、台詞を消化することさえできていない。
とはいえ、違和感がもっとも炸裂しているのは鈴木杏だろう。おっとりと、ゆっくりしゃべるのではなく、ただ単語の間、台詞の間が長いだけ。
読んでいるようにしか聞こえませんぜ?
カメラワークも、アングルは真似しているものの、なぜかパンフォーカスを使っておらず、妙に視界深度が浅い。
編集はほぼお手本通りだが、ときどきまのびするのはいただけない。
それが一番酷く出たのが最後の決闘シーンだというのは、悪夢のようだといえるだろう。
ボロッカスに書いたが、目も充てられないほど酷い出来というわけではない。
ただ、オリジナルにはあらゆる意味で及ばないというだけだ。
それを立証するように、どうも初見の人にはそれなりに面白いようだ。
うしろの席に坐っていた小学生らしき男の子二人。父親と一緒に来ていて、バッカンバッカン笑っていたからな。