クィーン
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ヘレン・ミレン/マイケル・シーン/ジェームズ・クロムウェル
2006年/英・仏・伊/104分/戸田奈津子/☆☆☆☆
批評 冒頭の、女王の立場説明シーンから最後まで一気に行った
国民と王室を繋ごうとする英国政府、引いても就任したてのトニー・ブレア首相と、人間的な感情と伝統を守ろうとする王女の感情の間で揺れ動く「クィーン」エリザベス二世の物語。
歴史的な事件には、複数の視点が存在する。
それは、どれが正解でも、どれが間違っているのでもない。
ただ、それだけの解釈があるのだと思う。
この映画は、ダイアナ元英国王妃死亡事故に始まる英国王室の混乱を、徹底的に王女の目線で描いたものだ。
そこには、ささやかれる陰謀論は無い。
王室を非難する国民の声も、マスコミの向こうに過ぎない。
スペンサー家の動向も、アルファイド家の動向も、電話の向こうに、TV の向こうに出てくるだけに過ぎない。
そうしたものは、無くて当然なのだ。
そういう視点の映画なのだから。
抑制された演出と、高い演技力の役者を揃えた上でしか作れない。
英国映画の底力を見せつけられる見事な仕上がりであった。