ディパーテッド
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ/マット・デイモン/ジャック・ニコルソン
2006年/米/152分/栗原とみ子/☆☆☆
批評 暴力性しかないスコセッシ映画の本領発揮
警察に潜入したマフィアと、マフィアに潜入した警察官の物語。
香港ヒルムノワールの傑作、「インファナル・アフェア」のハリウッドリメイク。
所々のエピソードや、二人の“潜入”の物語という大外枠こそ同じだが、だいぶん印象の異なる映画に仕上がっている。
異なる印象を与える最大の要因は、その暴力性だろう。
特に、マフィアのボスを演じるジャック・ニコルソンは強烈だ。
暴力性を剥き出しにし、正気の淵にかろうじて立っている狂気の男は、オリジナル版ではありえなかった迫力を、一人で生み出してしまっている。
「アビエイター」ではなりを潜めていた、スコセッシの面目躍如。
生々しい暴力性の描写はさすがだとうならせられる。
問題なのは、この暴力描写を支えきるだけの物語性の不在だろうか。
原作から中途半端にエピソードを抜き出してつくった物語は、時に不自然な状況を生み、時に全体から浮いたシーンを作ってしまっている。
元々、パズルのごとき複雑性をもった脚本だっただけに、主要エピソードを、中途半端に抜き出してくる、という方法には無理があったとしか思えない。
致命的に破綻しているわけではないのは、観客にとっては救いではある。
「出来の良いハリウッド映画」ではあるが、その程度の映画でもあると言えるだろう。
傑作でも名作でもない。