カル
監督：チャン・ユニョン
出演：ハン・ソッキュ／シム・ウナ
1999年／韓国／118分／☆☆☆☆☆
批評 韓国発、観客に挑戦するハードゴアスリラー
ソウルで発見されたバラバラ死体。
連続して発見された三つの死体は、しかし体の一部位が存在していなかった。そしてその死体をつなぐ一人の己の過去を封印した女性。
なおも続く連続殺人。犯人は、いったい誰で、なにが目的なのか．．．
いきなり人間の解体から始まるのは、文字通り衝撃のオープニング。
宗教画と交互に写されるそのシーンの緊迫感は、見ている者を一気に映画の世界に引きずり込む見事な演出と言える。
途中かなり露骨な複線もあるものの、連続猟奇殺人の謎を全体に撒き散らした物語運びは見事の一言。監督はもちろん、脚本家と演出家はそうとうこの手の映画を研究したのではないだろうかと思わせる上手さ。決して斬新な画があるわけではないが、確実に魅せる (誤変換にあら�
映画の中で実に残念なのは、ヒロイン、チェ・スヨン (シム・ウナ) の父・ヨンフンの画きかた。
「ヒロインが留学前に会ったのが最後」という台詞でしか説明が無いのに、行方不明であることが周知の事実として画かれていること。キーマンであるにも関わらず、これはあまりにも説明不足。非常に残念だ。
たしかに周辺の状況から推測することは出来るが、いくらなんでもその一言だけってのはやりすぎに思える。
それと、連続殺人事件が社会的に騒がれている様子が見えない。
TV 局が騒いでいるのも警察本部前だけでだし、その辺りの画き方に甘さがあるように思えるな。
あと、ラストは究極的に言って好き嫌いだろうね。
謎の一つ一つが、一応とは言え一つにまとまったかに見えるエンディング手前のCDショップ (どうでも良いことだけど、タワーレコードだそうです、名前の連呼からしても大手スポンサーっぽいです) 。
そして残るかすかな疑問。
まさかこのまま終わるのかと思った瞬間、恐ろしいことにすべての謎が、実は全然解けていなかった！！というぶち壊しをやって唐突に物語り終了。
なにがすごいって、ここで終わりにする度胸だろう。そうとうの覚悟が無いと出来ないよ？こんなところでぶっちぎっちゃうのは。
それだけに好き嫌いはシビアに出ると思う。特に、映画は娯楽であり、なおかつ映画単体で完成していなければならないと考える人には、許せないんじゃないのか？
個人的には傑作だと思うけど、そう簡単に人に進められる作品ではないのも確かだな。