最低映画への有罪判決
第弐拾六回「パールハーバー」を斬る・前編
この映画は、多くのことを訴えます。
間違った日本人観、間違った歴史的事実。それだけではありません、間違った演出、間違ったキャスト間違った、間違った、間違った、間違った...
ところが、この映画は正しいこともたくさん教えてくれます。間違いの中にひそむ真実。はたしてそれは何なのでしょうか?この文章で私はそれを考えて行きたいと思います。
(注・文章構成上の問題から、物語と斬る順番に差違があることをあらかじめご了承ください)
レイフ君と、ダニー君は大の仲良し。なにせお子様の頃に飛行機に乗り込んで一緒に命をかけちゃうほどの仲良しです。
数年後、二人は大きくなっても相変わらずの仲良し。パイロットになってやっぱりお互いの命をかけちゃってます。
こうもなるとただの馬鹿です。しかしこの映画は人生の教訓を秘めた大傑作。だからこれも一つの教訓なのです。
教訓 : 過去の失敗を学ばないとダメ人間になる
さて、レイフ君はパイロット適正を受けた時にちょろっとズルしてくれた看護婦のイヴリンちゃんを口説きます。
イヴリンちゃん、あっけなく口説かれます。
あぁなんたることでしょう。レイフ君は、イヴリンちゃんがとんでもない女でることに気が付かなかったのです。
この時、そのことに気が付いていれば、あるいはその後の悲劇は回避できたのかもしれません。しかし、後悔先に立たずの言葉通りそんなことは出来ないのです。
彼が、よりによって過去からなにも学べないとんでもない馬鹿者だったことも、この悲劇の一要因だったのかもしれません。
このレイフ君。イヴリンちゃんを口説いたものの、上官から呼び出し食らって命令を受けます。
「ちっくら英国いってナチをぶっ殺してこいや」
イヴリンちゃんを置き去りにしてバトル・オブ・ブリテンに向かうレイフ君。
あぁあわれイヴリンちゃん。せっかく良い男をつかまえてハッピーマレッジへの道を邁進する予定だったのに、肝心の男に逃げられてしまいました。
しかし執念のイヴリンちゃん。なんとか男の心を逃がすまいと手紙によって連絡を続けます。遠距離恋愛は物語ほどうまく行かないよ〜、と思うかもしれませんが、これは物語りなので問題なしです。
ところでイヴリンちゃんはなんでレイフ君にそこまで執着したんでしょう?ちょっと分からない。その後の展開を見ているとなおさら分からない。
しかしここで一歩引いてみると、魔性の女の本性が見えます。きっと彼女は「堪え忍ぶ美しき女性」の評価を得たかったに違いありません。
偏見かもしれませんが、そう考えればその後の展開に納得が行くのです。
ここで日本軍登場。あらゆるメディアで絶賛された日本軍の描写です。
違和感ありまくりの日本語は放っておくとして、青空の下で開かれる御前会議というのは、どうみてもただの馬鹿です。
そもそも青空の下で、こうもどうどうと会議などしていたら情報筒抜けでしょう。
ほら、すぐ側で子供が凧上げなんぞをしています。
会議の内容を聞いていると、どうやら本当に会議をしているようです。偽装ではないようです。
日本軍には防諜の概念が無かったのでしょうか?
ちょっと話しは前後しますが、米軍は最期まで日本軍の奇襲攻撃を予想できませんでした。
これも史実と大分違....いぃえ、青空の下での御前会議、その内容さえ把握できない米軍。ここには重大なメッセージが隠されています。一つは、青空会議でさえ諜報させなかった日本の防諜体制の素晴らしさであり、青空会議からでさえ情報を得られなかった米軍の諜報活動のカスさかげんです。
教訓 : 情報収集はきちっとやるべし
この後も繰り返される青空の下での作戦会議。
偵察活動中なのに、なぜか手にしている艦艇図、地形照合図、兵力配備図など、それらすべては、情報を守れず、奪えなかった米軍を馬鹿にし、情報を入手し、守った日本軍を絶賛しているのです!!きっとそうなのです!!
教訓 : 自分の情報は守りぬけ
物語は本筋に戻ります。胸くそが悪くなるようなレイフ君とイヴリンちゃんのやり取りの後、レイフ君何回目かの出撃。
戦闘の末、後方を取られ、水面ギリギリで銃撃され、噴出したオイルで前方視界が塞がれ、機種が勢いよく下がって、しかたないので風防を拳銃で打ち抜いて司会を確保するという作業を数十秒かかって終え、前方視界を確保したらさらに後ろから銃撃されてます。
独逸空軍のパイロットは、どうやら情けのあるパイロットだったようです。前も見えない戦闘機に攻撃は出来ないという武士の心をもっていたに違いありません。だからこそ、数十秒におよぶ作業の間、ただひたすら後ろから追いかけるだけだったのです。
どうやって視界が塞がれていたり、見えるようになったりしたのか分かったのかって?そりゃぁあなた、UFO さえ開発していた(世界観違うという突っ込みは禁止)第三帝国。なんだってありです。
そんな激戦の末、レイフ君はあわれドーバー海峡の藻屑と消えます。
レイフ君の訃報に悲しむイヴリンちゃん。なかなか演技派の彼女らしいです。悲劇のヒロインを演じることで、次に引っ掛ける男を探していたに違いありません。
その罠に引っ掛かったのは、ダニー君。さすがにレイフ君と共に馬鹿さかげんを十分に発揮するだけあって、イヴリンちゃんの罠にあっけなく落ちます。
そうとは知らないダニー君。親友が死んだのを良いことにイヴリンちゃんに急接近。
「ぐっへっへっへ。姉ちゃん、オレと一緒に空中デートをしてみねぇか」
と、飛行機を奪って真珠湾の空へと飛び立ちます。
このシーン。なんだかとってもデジャヴに教われます。「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」に同じようなシーンがあったなぁと。
きっと気のせいです。一時期ハリウッドで「マクロス劇場版」の実写化の企画があったからって、その企画と平行してデジャヴーに教われまくる「トップガン」が作られ、「トップガン」のプロデューサーがこの映画のプロデューサーだからって、そんなことを邪推してはいけません。
この映画の製作会社は「ジャングル大帝」の製作元であられる、天下のディズニーなのです。幼稚園児の書いたミッキーマウスに文句を付けるほど著作権にはこだわるディズニー様なのですから、似ているのはきっと偶然です。
しかしただの偶然ではないでしょう、なにか理由があるはずです。
そう、このシーンにはメッセージが隠されているのです。
教訓 : 軍規を恐れず軍用機でデートしてこそ軍人である
−予告−
意気揚揚たる未来への道が開けたように見えたダニー君とイヴリンちゃん。しかし、歴史はこの二人の前に残酷な運命を用意します。時に1941年12月。
迫り来る日本海軍機動艦隊。
戦争は、友情を奪うだけでは空き足らず、二人を愛をも裂くのか...