地獄の黙示録・特別完全版
(Apocalypse Now Redux)
監督：フランシス・フォード・コッポラ
出演：マーロン・ブランド／ロバート・デュヴァル／マーティン・シーン
1973年／米国／203分／戸田奈津子／☆☆☆
批評 大分、分かりやすくなった
(注・旧作を見ていない人には理解し難い文章かもしれません)
最前線の川を上り、神を殺しに行くという基本プロットに変化はない。当然だな。
その川を上るシーンで、フランス人入植者と出会うシーンや、プレイメイトとの交流のシーン、そして神の説明が大幅に増えている。
まずフランス人入植者との出会いによって、大国がいかに小国に対して差別的で傲慢であるかを画く。これが“フランスは何も学ばなかった”あるいは“フランスは失敗した”という意味ではなく、「アメリカは同じ失敗をするな」という台詞と、作品中で語られるように、すでに�
プレイメイトとの出会い(これは、旧版のが増えている)は、哨戒艇の乗組員の人間性を醸し出すことに成功している。けど、プレイメイト絡みのエピソードって全体的にいらないような気がするのは私だけなのか？
圧巻なのは神の存在だろう。
旧作では、一人で悩んでいる“神のような存在”として、非常に神秘的に画かれていたカーツ大佐が、なぜ彼はあの闘いで、あの場所で王国を築かねばならなかったのかが画かれている。
そして、彼がなぜ死なねばならないのか、あるいは殺されねばならないのかが。
これは前作で「私だけが悩んでいるなどという態度は傲慢だ」という考えが頭をよぎった私のような人間には納得させられる変更だろう。
前作で、正気と狂気、そして戦争に正義や正気はあるのか？を問うた本作は、今回の完全版で、「戦争の第一の犠牲者は真実である」という、P.ヴィリリオの言葉に従うかのようなテーマを前面に打ち出し、より戦争そのものに関しての疑問を観客にぶつけることになった。
ただし、相変わらずベトナム側の視点はない。
また、長くなった文だけ勢いはなくなった。