SPACE BATTLESHIP ヤマト
監督:山崎貴
出演:木村拓哉/黒木メイサ/柳葉敏郎
2010年/日/138分/☆
批評 壊れたら復活しない第三艦橋、その律儀さの謎に関する考察
中途半端な設定変更と、圧倒的予算不足が、映画に決定的な破滅を導いた好例として、後々まで語り継がれるだろう。
そういう作品。
以下、ネタバレを含む。
物語的に決定打になっているのは、敵のガミラス星人の設定変更。
特に、オリジナル版 (とはいえ、実は“1”でのみなのだが) にあった、「放射能のある大気でないと生きられない」という設定がまるごと消滅しているのは決定的。
遊星爆弾による地球の放射能汚染作戦に必然性が無くなっている。
さらに、地球人に寄生可能な精神生命体である、というのであれば、遊星爆弾でチマチマと攻撃するより、直接地球人に寄生して壮大に同士討ちさせれば、もっと簡単に地球征服できることだろう。
これらの破綻が明らかになるのが中盤以降なのは、せめてもの救いだ。
自分が軍人で戦闘機パイロットだったのに、その時期に起きた事故の内容をまったく知らない森雪の馬鹿さ加減など、突っ込みどころは多数あるが、ガミラス星人の破綻具合に比べれば瑣末的だ。
こうした破滅的物語に拍車をかけるのは、もちろんビジュアル的な甘さ。
200年後の未来 (5年前までは地球は無事) なのに、艦橋には普通のキーボード (テンキー付) が設置されているとか、戦闘描写の艦橋の会話劇率が高い (予算無かったんだろうなぁ) 等々。
物語的破滅とビジュアル的甘さに止めを刺すのが、そのシーンを盛り上げるためのシークエンスの甘さ。
アニメ版で見られた「発進シーンを時間をかけて見せる」、「波動砲発射シーンを時間をかけて見せる」という部分がまったく無い。
あっけなく出発し、あっけなく発射する。
盛り上がりには、手順が必要。これは「宇宙戦艦ヤマト」に限らないはずなのだが。
なんなんだかなぁ。
〜以下、ヤマトファンのどうでも良い嘆き〜
「馬鹿めだ」
「は?」
「馬鹿めと言ってやれ」
が無い。
山崎務の声であれが聞けるのかと思って期待していたのに・・・