オーケストラ!
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:アレクセイ・グシュコフ/メラニー・ロラン/フランソワ・ベルレアン
2009年/仏/124分/関美冬/☆☆☆☆
批評 曲を知らない人にどれだけ伝わるのか?
ソ連時代の圧政により楽団を追われた天才指揮者。30年後、ボリショイ交響楽団の清掃員になった彼は、偶然手にしたFAXを手に、同じく楽団を追われた演奏家達を集めて、パリ公演に挑む。
コミカルに進む前半と、その間に用意された数々の伏線。
これぞ騙しのテクニック!という見事な伏線を張り巡らし、レストランのシーンから演奏シーンへの流れで、観客を見事に翻弄する。
ひもじい暮らしをしていた人々が、自由を手にして遊びまくってしまう下りを使うなど、シリアスな部分とコミカルな部分の対比も見事だ。
コミカル演出を入れ込むことで、長年楽器を演奏していなかった人が奇跡を起こす事に、ファンタジーとして「有りだな」と思わせるようになっている。
この構成は、本当にすごい。
チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を知らない人に、背景となる“狂気”がどれほど分かるのか?という疑問はあるし、なぜバイオリニストが“チャイコフスキーだけは弾かない”のか分からない (字幕翻訳のミスである可能性はあるが、翻訳上、バイオリニストは自発的に「弾かない」としている。育ての親がそうしたからではない) 等、気になる部分が無いではないが、存分に楽しめる映画であった。