愛についてのキンゼイ・レポート
監督:ビル・コンドン
出演:リーアム・ニーソン/ローラ・リニー/クリス・オドネル
2004年/米・独/118分/林完治/☆☆☆☆
批評 研究馬鹿は周りを見ないし、他のことをまるっきり考えない...
処女童貞で結婚したキンゼイ博士は、迎えた初夜に“大変な困難”に直面する。
彼は思った。
これまで無かった、性交渉に関する資料があれば、問題は避けられたのでは?と。
これからの人たちも、直面しうるこのこの問題を避けられるのでは?と。
現在においても、その調査は難しいとされる (日本では学術的に行われたことは無い。やろうとして、研究費を拒否された人は聞いたことがある) 性行動に関する調査を行い、人間様の性行動は様々であるが、その行動において、正常と異常を区別することは出来ない = 皆変態様 (
エキセントリックな博士の半生を、しかし極めてスタンダードな方法論で作った上質の一本。
しかし、それであるが故に、満点になるには不満がちらほらとある。
一つは、研究対象としてのセックスに研究員共々取り込まれ、フリーセックスにはまって行く事への人間的苦悩がほとんど描かれないこと。
映像で一瞬表現され、台詞でも一回ちょっとだけ描かれているが、それでおしまい。
その後はともかく、その過程、その人間的苦悩は知りたいね。
もう一つは、最後に明らかになるキンゼイの父親のトラウマが、かなり唐突に出てきてしまう事。
父親の厳格さを、もっとも明白に物語っているのが、キンゼイの性行動に対する研究が始まる前に集中しているのがその原因だと思われる。
映画そのものの評価とはやや外れるが、冒頭、新任大学講師(助教授?) と女子大生を演じるには、リーアム・ニーソンとローラ・リニーは歳を取りすぎているだろう!?というのもある。
それでも、キンゼイ博士を聖人にすることも、ただ褒め称えることもせず、その迷惑千万な、ほとんどファナティックとも言える行動を極めて冷静に描いている、良い仕上がりの作品であった。
ところで、アルトゥール・シュニッツラー「夢奇譚」(スタンリー・クブリック「アイズ・ワイド・シャット」の原作) は20世紀初頭に発表されたと記憶している。
あの本は、女性の性欲を正面から認めた作品として知られている。
ん〜、「キンゼイ・レポート」の女性版が発表されるよりさらに前。
社会的騒動になったという話もなるほどと納得させられた。
全然映画とは関係ないが。