ブッシュ
監督:オリヴァー・ストーン
出演:ジョシュ・ブローリン/エリザベス・バンクス/ジェームズ・クロムウェル
2008年/米/130分/伊原奈津子/☆☆☆
批評 チェイニー、ライス、ラムズフェルドはただの外道
名門ブッシュ家の落ちこぼれ、J.W.ブッシュ。
彼はいかにして大統領になり、いかにして政策を決定したのか。
望んでいなかったのに政治家になってしまい、「パパに認められたいから」と頑張るも、パパはブッシュ家のエリート街道を驀進する弟ばかり気にしており、全然ボクの気にしてくれない。
コンプレックス持ちの馬鹿だが、人は良く、憎むことのできない男。
この映画で描かれる J.W.ブッシュはそういう人間だ。
他の作品に比べると、この映画のブッシュは人間的には良いヤツだ。政治家としては無能なのは、変わらないが、
独特の人物像を作り上げた作品ではあるが、同時にそのキャラクタ造形に欠点もある。
脚本レベルで見ると、J.W.ブッシュのコンプレックスを生み出し、結果的に世界を悲劇に向かわせる事になってしまう弟ブッシュの描写が希薄だという事。
作品では、弟ばかり気にするパパブッシュの描写はあるが、優秀な弟が、その姿を見せることがほとんどない。
前半戦で、J.W.ブッシュの“若気の至り”を描くのと同時に、エリート街道を驀進する弟の描写を入れておけば、中盤戦、無理に政治家に転向し、後半戦、パパ・ブッシュの復讐に燃え、(弟にはできない) 戦争をおっぱじめてしまう、ほとんど狂気ともおもえるコンプレックスがより際立ったのではなかろうか。
あるいは、その姿を描くことを完全にやめ、逆に存在を際立たせるかだ。
どちらにせよ、ブッシュという人間を、周囲の人間を使って立体的に描くことに、成功しているとは言い難い。
それでも十分に面白いのは、さすがオリヴァー・ストーンだと思うけどね。