ローラーボール
監督:ジョン・マクティアナン
出演:クリス・クライン/ジャン・レノ/LL クール J
2002年/米/97分/菊地浩司/☆☆
批評 脚本も役者も
荒廃した近未来。
人々は暴力的なスポーツ“ローラーボール”に熱中していた。TV 視聴率の為に意図的に事故を起すメディア王と、それに気が付いた選手の物語。
だと思う。たぶん。
悪役のジャン・レノがやたら大袈裟な演技を見せるのは、まぁ脚本のデキを考えると妥当だから放っておくとして、主人公を演じるクリス・クラインとヒロインを演じるレベッカ・ローミン=ステイモスの演技力は致命的だ。
なにせ二人とも表情がない。
「ファイナル・ファンタジー」のキャラクタか、はたまた出来の悪いレプリカントか?
クリス・クラインは、“ポスト・キアヌ・リーヴス”と呼ばれているとチラシ等に書かれている。
キアヌ・リーヴスも決して演技の上手い役者ではないが、こいつよりは格段に上手いと言える。言い切れる。少なくとも表情変るもの。ちょっと大袈裟なくらいに。
脚本の問題はもっと酷い。
あまりにもステレオタイプな悪役、ただの馬鹿にしか見えない思えない主人公、必然性の感じられないバイオレンス、必要の無い社会描写...
冒頭のサンフランシスコでのチェイス (冒頭は高目の視点で撮影しておいて、速度が出てくるにしたがってカメラを下に降ろしたり煽ったりを増やすことで、迫力を出す) に始まって、タイトルにもなっている競技、ローラーボ−ルの迫力もけっこうある。
こうした、ビジュアル的にはそれなりに面白いことが、よりいっそう物語の駄目さかげんを煽っている。
これが「ドリブン」のように、臭ってくるような男の友情を劇画のように見せたり、「ハムナプトラ」のように薄っぺらのキャラクタが進める薄っぺらの物語を派手なビジュアルで見せるような割きりがあれば違ったのだろうが、そうした割り切りも無くあくまでも中途半端に進行
これではビジュアルに注目することも、物語に入れ込むことも出来ない。
舞台が中東に限定されてるのかも理解に苦しむ。
世界レベルで大人気な競技だと印象づける演出が随所に入るが、競技の移動先の国を見るとはたして本当に世界レベルで人気があるのか俄かには信じられない。
冒頭はサンフランシスコで始まっているが、そこで競技が行われている気配はない。
どうせならサンフランシスコの人でごった返す街並みと競技場をワンカットで見せたほうが、よりビジュアル的な迫力があり、同時に人気があるという説得力があるのではないだろうか?
たしかに中東でも米国でも、そこでやる理由にはかけるが、その迫力という意味で米国でやったほうが良かったとおもう。
画そのものの完成度は低くない。
やたらと早いカット割や、無駄に暗いカットでなにをやってるんだか分からない最近のカスなアクションシーンから見れば、その完成度は結構高いとさえ言えるかもしれない。
しかし、それだけの映画だ。
正直なところ何を見れば良い映画なのか分からない。ある意味、マクティアナンの演出がそれなりに上手かったことがこの映画の評価を難しくした原因だろう。
もっと下手だったら、単純に“駄作”という評価で終わったのだ。
ところでパンフレットに乗っている物語紹介なんだが、「砲弾が命中、バイクは爆発した」と書かれている。
少なくとも私の目には、ライダーにライフルから発射された銃弾が当たって死亡。そしてバイクが転倒した、というように見えたんだが、私の目が悪いのだろうか?