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監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:イザベル・ユペール/ブノワ・マジメル/アニ・ジラルド
2001年/仏・墺/132分//☆☆☆☆

批評 現実が恐怖となる映画

 親に抑圧されて育った中年のピアノ教師。彼女に一目ぼれした真面目な青年。
 その二人の恋物語。

 とだけ書くと、中年の女性ピアノ教師が、青年の力を借りて親からの抑圧を跳ね除けるまでを画く美しい純愛の物語に見えるが、この映画はそんな奇麗事にはしない。
 抑圧された中年女性は、ポルノショップに通い、その性的な願望としてマゾヒスティックな物を持っている。そのマイナスベクトルの欲望をぶつけられた青年の混乱。

 この映画は恋愛、母の娘に対する過干渉問題、人間の精神など、極めて多数の視点から作られている。同時に、観客はそのどれからでも見られるように出来ている。
 計算したのか、それともしてないのかは分からないが、脚本の完成度の高さや、それらをささえる役者、演出など、トータルの完成度の高さがそれを可能にしているのは間違いない。

 個人的にもっとも気になったのは、ヒロインの心理的錯乱だ。
 なぜなら、このヒロインが完璧に幻想の恋愛を生きているからだ。
 まともな人生を歩んでいれば、夢み見るような恋愛など現実の前に矯正されてゆくが、彼女にはそれが無い。非常に冷静で理論的に見える彼女が、実はそうした面でもっとも子供であることが分かる。
 それ故に、この映画は幻想が崩壊し、ヒロインが暴走、崩壊して行く結末に向かって進む。そのれはあまりにも痛々しいことだ。
 そしてその原因となった母親は、自分に責任があることに気が付いていない。娘が反抗していると言うことしか分からない。


 ヒロインが幻想に向かわせようと矯正すればするほど、寒々しく痛々しい現実的な結末に向かうからだ。
 この映画に盛り上がりはない。
 盛り上がりはヒロインの心の中にだけあり、盛り上がれば盛り上がるほど、現実の寒々しさが目立つ。
 ある意味、こんなに恐ろしい映画はない。

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