スパイ・ゲーム
監督:トニー・スコット
出演:ロバート・レッドフォード/ブラッド・ピット/キャサリーン・マコーマック
2001年/日本/128分/戸田奈津子/☆☆☆☆
批評 いや、良い映画なんだけどね
スパイ映画と言うよりは、渋い男の友情映画。
非情な世界に身を置き、その中で動きつづける男ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)と、その非情な世界でなおも情を捨てられないトム・ビショップ(ブラッド・ピット)。
物語は、トムが中国の軍刑務所で独自に作戦を遂行中に失敗。逮捕されたところから始まる。
物語は二つの柱で構成される。
CIA 当局会議室で、ネイサンによって語られるトムとの昔話と、その会議室を中心とする CIA 局内で政府を向こうに回してトムを救出しようとするネイサンの行動である。
「非情になれ」と言いながら、友情を感じるかつての部下を助けようとするネイサンの行動。この映画の面白さは、このドラマにある。なぜ助けねばならないのか。そこにある友情を画く。だが、いかんせんそれに集中しすぎた。
スパイ活動の過程で犠牲になった人々、犠牲にしてしまった人々に目を向けることがない。
吹っ飛んだビル。巻き添えになった協力者。そうした者に目をむけない。レバノンでは難民キャンプを画いたりもしているのに、だ。
たしかにダブルスパイや、敵側の諜報員の話はある。しかし、彼らのことも二人の友情や師弟関係を通してしか画かれない。
それがこの映画の不満だ。これはアメリカ映画の限界なのかもしれないけどな。
トニー・スコットの演出は見事。場所によって、シチュエーションによって画面構成をまったく違うものにすることで、観客に分かりやすくすることに成功した。
そして回想シーンとして登場する、ベトナム、ベルリン、レバノンも、それぞれ画面の基本色を変えることで明示してみせた。このあたりはさすがに上手いね。
CIA 局内での駆け引きに緊迫感はあるし、回想シーンの比較的押さえた戦闘描写は上手い (特に、冒頭と最期のアクションシーン)。
あくまでも個人の洞察力、分析力、判断力がすべてという諜報戦を画いているという意味でもリアルで真に迫る物がある。
だが、それだけ完成度の高いものを用意しておきながら、語っている舞台が結局アメリカという枠を超えられていないのが残念でしかたない。
あとレッドフォード。いいかげん年齢を考えろ。
イーストウッドだって「ザ・シークレット・サービス」や「許されざる者」で己の年齢を認めたぞ。