−本文章は、一切の敬称を省略している−
其ノ参 : アニメのSF考証

1. 前哨戦 <崩れる"ざ・がーどまん">

 次の企画を狙い、部屋に移動。
 前の企画が終わっていないようなので、部屋の前で待っていると、SF 大会の名物スタッフ、"警備主任"に遭遇。
 「お、"ざ・が〜どまん"(今大会で開かれる、警備主任をネタにした企画名) だ」
 と言うと、崩れ落ち、泣きながら言った。

 「緊張しているんだ、プレッシャー掛けないでくれっ!」

 仕事以外ではプレッシャーに弱いというのは事実のようだ。
 ちなみに企画「ざ・がーどまん」は、本企画「アニメのSF考証」と被っているため突入できず。

 企画の部屋に入り、DV が後ろの人の邪魔にならないよう、壁際をキープ。
 三脚を展開し、そして気が付いた。

 この三脚、ものすごく脚が弱く、ものすごく不安定だ。


 なんてこったっ!
 ここにも逆境が!!!!!


 しかし、もはやどうしようもない。
 他に選択肢など無い。他の選択もありえないし、ありえなかった。

 不安定な三脚でも、無いよりはマシだ。
 あとは、カメラ本体の手ぶれ防止機能に頼るっ!

 機械性能に頼るなどプロなら失格。だが私は素人なのさっ!!!


2. 本編 <アニメ業界暴露話>

 「NIPPON2007」(2007年日本開催予定のワールドコン) に向けての実験をかねてなのか、バイリンガルで実施された。
 司会者の脇に通訳者がいてしゃべり終わってから通訳するという方式のため、時間あたりの内容は、通常の半分になる。

 んが、ゲストが「宇宙塵」(日本ファンダム活動の先陣を切った雑誌。SS や批評文、研究文を記載した自主制作雑誌で、同人誌の先駆けと言って差し支えないだろう) の柴野拓美、企画者が井上博明(「NIPPON2007」実行委員長。本業はアニメプロデューサー) という事で、内容の"濃さ"は保証つき。

 タイトルから想像していたのは、「アニメ作品にSF考証をしてみる」お遊び企画かと思っていたのだが、実際には「アニメ作品のSF考証史」。企画者もゲストも確認してなかったからこその勘違いとも言える。
 柴野拓美がタツノコアニメから声を掛けられ、「宇宙エース」(未見)、「新造人間キャシャーン」(昨年の、悪夢の実写劇場版ではない。もちろん見ている)。「科学忍者隊ガッチャマン」(もちろん見ている)、「宇宙の騎士テッカマン」(個人的にはブレードの方が好きだ。もちろん見ている) 等のSF考証を行った際の話をする。

 特に面白かったのは「ガッチャマン」の話で、設定のほとんどが後付けだった、という話。視聴者に指摘されてから作った設定も少なからずあるとか、X の正体は、物語が佳境に入ってから「そろそろ作らなきゃなぁ」と思って作った、という話は、衝撃的でさえあった。
 てっきり全体の構成を考えてから作った作品だと思っていたからな。

 アニメの仕事を通して、製作側に、設定の意図が伝わらず妙な形で映像化された事もあったが、映像的には面白く、また、綺麗に作画されていたので不満は少なかったという総括は、柴野拓美の温和な性格と同時に、タツノコの上質な仕事をあらわしているのではなかろうか。

 その温和な柴野拓美が、やや声を荒げていたのが、柳田理科雄に付いて。

 「あの本には、愛が無い」

 と一刀両断。

 「ありえないと指摘するのは簡単。それをいかに説明するかが SF であり、それを楽しむのも、SF の楽しさ」

 という指摘には、大いにうなずかされた。
 私もやるもんなぁ。無理矢理説明する遊び。
 この企画では指摘されなかったが、「すごい科学で守ります」など、まさに愛にあふれた本であると言えるだろう。
 あの本は(SF 大会の企画も)、愛があふれすぎているという側面はあるのだがな。

 思っていた企画とは違ったが、大変満足できる内容であった。
 こういう話は面白いのだが、資料化される事が少ないのがもったいない。

 企画中のバイリンガルに関してであるが、「"世界大会に向けて"実験出来る所で実験して、今のうちにトラブルは出しておいたほうが良い」という実験色を強く感じた。
 実際、内容が極端にマニアックだったため、翻訳が詰まりまくるというトラブルも発生。
 このあたり、翻訳者にそのすじの知識を詰め込んでおく、あるいは詰め込み済みの人間を連れてくる必要があるだろう。


次回「其ノ四 : 空想科学ジャズライブ」に続く
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