演劇レーベル Bo-tanz第19回公演
ステリル〜地下都市の発生学〜
作/演出:花田智
出演:高橋彰規/木村淳/羽鳥友子
☆☆☆☆


批評 よくここまで...
 物語は非常に説明しにくい。あまりにも多くの要素を含んでいるからだ。
 よくまとめたもんだと思うほどに多くの要素を持っている。
 よって物語りの説明は、無し。私にはまとめられないから、というのはただの真実だ。


 さて、前回の公演から大きく変ったのは二つ。
 一つは冒頭にあったステリルの反乱が無くなったこと。
 おそらく「A FAREWELL TO GERMS」で演じられたため、シリーズ全体を一個の作品と通した場合を考えたのだろう。

 もう一つは、言い回し。
 シリーズ通しての矛盾点が、これでかなり減った。
 さすがに奇麗に全部なくなった訳ではないが、一度完結したストーリーであることを考えれば十分な修正だったのではなかろうか。
 そうした物語の展開とは関係ないが、内分泌撹乱化学物質 (俗に言う環境ホルモン) という言い回しを捨てたのは、語感的に非常に分かりやすくなったと思う。

 前回見た時と変らず分からなかったのは「釜の蓋が開く」という表現。
 あれは単純に閉鎖区画が解かれるという意味なのか、それともなにか他に意味があるのか。“閉鎖区画の開放”を意味してるとすると、シリーズ通して考えると疑問が残るな。
 「半年前まで電源が供給されていた」という台詞もちょっと分からない。
 なんでウン十年前に閉鎖され、記録上は存在さえしないことになっている区画に電源が供給されていたのか。また、なぜ故にそれが半年前に切断されたのか。

 そしてこの作品最大の謎は、ステリルの反乱そのものに内包されている。
 彼らの反乱は、「A FAREWELL TO GERMS」では大規模に報道されていた。それらの記録をどうやって完全抹殺したのか。公共記録を抹殺したところで、私的な記録は抹殺できないからな。

 じつはこれと同じ類の、シリーズ物であるが故の矛盾が、今回の公演で生まれてしまった。
 本作によると、地下都市の人間は通常、海の側には行けない。
 本作のラストでヒロインが海の側に行けたのは、防護ガラス (これもライフルでもなければ破れないという台詞があるわりに) がベレッタ M93R で割られたためである。
 ヒロインは環境汚染によって死の世界と化した海に投身自殺を図ったことが他の作品で分かっている。

 以上の事実からして彼女はステリルで海のそばに降り立ったときにそのまま投身自殺を図ったと考えるのが妥当だ。
 しかし今回の公演のラストでは、婚約者の渋沢と肩を組んで海から離れてしまう。
 前の公演では海を見ていて終わっていたはずで、私は「あの後、そのまま飛び込んだのね」で終わっていたのだが、それが崩壊してしまったようだ。
 冒頭でシリーズ全体を通したときのバランスが取れていただけに、そしてこれがラストシーンであるが故に残念だ。


 実は他にもあるのだが、それは「宇宙戦艦ヤマト」で

 「なんでスターシャはコスモクリーナーの設計図を送らなかった!?」

 というのと同じレベルのツッコミなので止めて置こう。作品が成立するためには、しかたない嘘や矛盾もあるのだろうから。






 最期に、まったく個人的な雑念をここに記す。
 途中の曲で「アヴァロン」が掛かった時には驚いた。
 なぜなら、どの作品だったか覚えていないが、前にも「ヘヴィーアーマー」(だったはず、パトレイバー関係の曲だったのは覚えているが曲がヘヴィーアーマーだったという確たる記憶はない) が掛かったことがあった。
 もしかして川井憲次のファンがいる!?(押井守のファンかも知れんが)


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