演劇レーベル Bo-tanz第17回公演
東仲町商店街定在波【改訂版】
作:花田智/演出:高橋彰規
出演:岩永智/高梁彰規/羽鳥友子
☆☆☆☆

批評 設定が生かしきれなかった
 体に以上はないが、目覚めない。しかし脳波は覚醒状態を示している。
 夢にとらわれた一人の少年。彼を救うべく、東仲町商店街の面々が彼の夢にもぐりこむ!


 話を作り出すために設定を作ったのであれば余計な説明をしすぎた。
 設定を先行して作り上げたのであれば、もうちょっと慎重に世界を構築するべきだった。

 最大のミスは、現実世界で「彼は今、非常に危険な状態です」という台詞だ。
 現実世界でのこの台詞が、夢の世界で反映されていない。
 たしかに、それであるが故に観客が“ここ”が夢の世界であることを意識せずにすみ、最後の一之谷らが“ここ”が夢であることに気がつくという、本作品のテーマが生きてくるのは確かなのだ。
 しかし、それがないが故にこの台詞は浮いてしまっている。物語的に考えれば、この台詞が無ければ夢の世界に入り込む理由が無いので、物語の展開的にツライのは理解できるのだが、その部分をなんとか処理できなかったものだろうか?

 しかもだ、夢の中に入り込んだ彼らの現状はどうなのだ?
 彼らとて、睡眠状態で能は覚醒している状況のはずだ。同じ悪夢を、しかも他人の悪夢の中にいるのだ。彼らこそ危険ではないのか?
 よりによって、他人を拒む深層心理が跳梁している世界なのに。

 己の作り出した設定に、忠実に物語を構築せねば矛盾が生じてしまう。
 物語のテーマ的側面が明白な分だけ、こういう基本設定的なミスが出てきてしまっているのは非常に残念であると言わざるを得ない。
 かの黒澤明も言っている「ディティールに凝れ、そうすれば矛盾しない」と。


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